10-1②決算調整のチェック一覧。関連。
「短期前払費用」の特例を活用した節税対策
家賃などの費用を1年分前払いすれば、支払った分は当期の費用に計上できると聞いたのですが、その場合の注意点は?
「前払費用」についての注意点は下記のとおりです。
「前払費用」は、期間損益計算の立場からすれば、本来は、支払った時点においては資産計上し、その後、役務の提供を受けるにしたがって費用化されるべきものです。
ただしその一方で、企業会計では、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらず、他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則にしたがった処理として認めています。(重要性の原則)
法人税の計算上も、この“重要性の原則”に基づく経理処理を認める立場から、「前払費用」として支払った金額のうち、支払った日から1年以内にサービスの提供を受けるもの(短期前払費用)については、下記の【要件】を満たしていれば、支払った期に損金算入(費用計上)することができるとしています。(短期前払費用の特例)
要件
〔1〕 「前払費用」としての要件を満たしていること
「前払費用」であるための要件]
一定の契約に従って継続的にサービスの提供を受けるものであること
(等質・等量のサービスであることが必要です。)
役務(サービス)の提供の対価であること
翌期以降において、時の経過に応じて費用化されるものであること
当期中に支払いが済んでいること
〔2〕 毎期継続して同様の経理処理をおこなうこと
〔3〕 収益と直接対応させる必要のある費用や重要性の原則を逸脱するような費用については、適用できません。
短期前払費用の特例が適用されない例
もともと月払いで契約を交わしていた家賃について、貸主の了承を得ないで、向こう1年分を前払いしたとしても短期前払費用の特例を受けることはできません。
〔※事前に月払い契約を年払い契約に変更しておく必要があります。〕
顧問税理士への報酬を期末直前に1年分を前払いしたとしても、短期前払費用の特例を受けることはできません。
〔※税理士のサービスは、等質・等量のサービスとは言えないからです。〕
期間限定の雑誌広告掲載料やテレビCM放映料等の広告宣伝費を前払いしたとしても短期前払費用の特例を受けることはできません。
〔※期間限定の広告掲載料やCM放映料は、継続的なサービスの提供を受けるものとは言えませんし、時の経過に応じて費用化される性質のものでもないからです。〕
賃貸事務所の1年分の家賃(4月から翌年3月分)を2月に前払する場合
〔※支払った時期から1年を超える期間を対象とする前払費用であるため、短期前払費用の特例を受けることはできません。〕
借りているマンションやビル等を転貸(又貸し)することによって賃貸料収入を得ている場合
〔※このようなケースで支払う家賃は、収益(賃貸料収入)に直接対応する費用であるため、短期前払費用の特例を受けることはできません。〕
短期前払費用の特例が適用される例
地代家賃
3月決算の会社であれば、2月に年払い契約に変更した上で、3月1日に3月~翌年2月までの1年分の家賃を支払えば、支払った金額を費用計上することができます。
〔※ ただし、上記(例5)に該当する場合は適用外です。〕
上記の「地代家賃」のほか、「賃借料」、「工業所有権の使用料」、「保険料」、「借入金利息」、「手形割引料」、「月払いの会費」などの費用は、短期前払費用の特例の適用を受けることができます。
重要性の原則の範囲から逸脱していないかを確認しましょう
短期前払費用の特例は、あくまで重要性の乏しいものについて、企業会計上の簡便な処理を税法上でも認めるという趣旨の特例です。
ですから、その会社の事業内容から判断して、原価的要素となるものや重要な営業費用となるものは、短期前払費用の特例の適用を受けることはできません。
重要性の原則の範囲から逸脱しているかどうかは、その前払費用の金額、法人の財務内容に占める割合や影響などを総合的に勘案して判断されます。
節税方法 固定資産税を未払費用として計上する
一つ目は、固定資産税を使った節税方法です。
法人税法上、固定資産税は次のいずれかの事業年度に、経費として計上することができます。
実際に納付した日の事業年度
納期の開始日の事業年度
賦課決定のあった事業年度(原則的方法)
この3つのうち、どれを使ってもいいのですが、一番節税になる方法は、3番の「賦課決定のあった事業年度」に、未払費用を計上する方法です。
この3番の方法が原則的な方法になるのですが、意外と1番の納付の都度経費に計上する方法を使っている会社が多いのです。
bluefish
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